【実施の背景】

障がい者の恋愛に関するアンケートを実施。恋愛に憧れるものの、障がいを理由に踏み出せない人が少なくありません。そこで恋愛における「出会い」や「きっかけ」に焦点をあてました。また、新しい出会いの形として急速な広がりを見せるマッチングアプリの利用についても実情を調査しました。

【調査対象者】

全国の「Co-Co Life☆女子部」サポーターおよび読者

【調査方法】

インターネット調査

【調査期間】

2023年1月26日~2月5日

【調査結果サマリー】

有効回答者数:111名

  • 既婚・交際中を合わせてパートナーがいる人は約4割。
  • 交際のきっかけは、身近な場所とWeb上の出会いがそれぞれ半々くらい。
  • マッチングアプリを使ったことがある人は4割を超え、うち半数がリアルのデートを経験。
  • マッチングアプリ利用で意見が割れたのは、相手に障がいを告げるタイミング。
  • 相手に望む条件は障がいの有無より人柄重視で「障がいを理解してくれる人」が理想。

 

【交際や出会いについての調査】

現在、交際している人はいますか?

どこで出会いましたか?

交際相手に自分の障がいを伝えていますか?


交際相手には障がいがありますか?

交際相手の障がいは気になりますか?

障がいが理由で恋愛に積極的になれないことはありますか?

「障がいが理由で恋愛に積極的になれない」人の意見

  • 障がいがあると恋愛対象に見て貰えないことが多いので、自分に自信が持てません。好きな人がいても、アプローチできず終わってしまうことがほとんどです。(軟骨無形成症)
  • 障がい者の私が恋愛なんてしていいのかな?と後ろめたさがあります。働いていないことも引け目を感じています。(過敏性腸症候群、強迫性障がい)
  • 彼の周りには、ミニスカートやハイヒールをおしゃれに着こなす健常者の女性がいっぱい。容姿に自信がないので「本当に私で良いのかな?」と思ってしまいます。(軟骨無形成症)
  • 以前付き合った彼の母親に「歩き方がひどい」と言われたことがトラウマになっています。(変形性股関節症)
  • 恋愛したい気持ちはあっても、自分の事でいっぱいいっぱい。そんな私が、プラスアルファで恋人に何かしてあげられるの?と言われたら…自信がありません。(髄膜脳炎後遺症)
  • 体調に波があるので、その時になってみないと調子が分からず約束ができないから。(重症筋無力症)

「いいえ」「相手による」と答えた人の意見

  • 意外と、障がいの有無に関係なく見てくださる方も多い印象なので、勇気を持って踏み出すことが一番大切かなって思います。(先天性小児脳性まひ)
  • 車いす利用はアピールになると思います。興味を持ってメッセージをくれる人が結構いました。(脊髄損傷)
  • 障がいがあることは悪いことではないから。(脳性まひ)
  • 恋愛はしてしまうものだから。(右半身まひ)

 

【マッチングアプリ利用についての調査】

マッチングアプリを利用したことはありますか?

利用したことのあるマッチングアプリ

プロフィールに障がいについて書いていますか?

「障がい」をプロフィールでオープンにする理由

  • 自分が後々困るから。(広汎性発達障がい)
  • 障がいを気にする相手に時間を使いたくないため。(右半身まひ)
  • 恥ずかしがることではないし、自分の一部だから。(特発性肺動脈性肺高血圧症)
  • 隠すことではないし、障がいを理解してくれる人でないと付き合えないから。(原発性免疫不全症候群、境界知能、うつ病)
  • 会った時に中傷されるのが怖いから。(知的障がい)
  • 相手はプロフィールでしか判断できないので、絶対に伝えておきたい事は始めに知らせるようにしています。(脊椎損傷)

 プロフィールに「障がい」を書かない理由

  • 「障がい」にとらわれず、自分の人間性を見てお付き合いするか考えてもらいたいので。(脳性まひ、知的障がい、自閉症スペクトラム、ADHD他)
  • 「障がい」は自己紹介にはならないと思います。自己紹介は自己PRにもなりうるので、マイナス面は書かないようにしています。障がいではなく「私」を見て欲しいからプロフには書きません。(摂食障がい)
  • 障がい者に対して偏見がある人もいるので、オープンにするのは慎重になります。(両下肢まひ)
  • 障がいのことは、メッセージで直接伝えたいから。(脳性まひ)
  • 本当に仲良くなるまで教えたくないのと、障がいを理由に断られるのが怖いから。(軟骨無形成症)
  • 障がい=恋愛のフィールドに立てない気がします。(軟骨無形成症)

マッチングアプリの相手と実際に会ったことがありますか?

マッチングアプリで出会った人と交際したことがありますか?

 マッチングアプリの良い思い出

  • 障がいのある人からやたら連絡が来ました。(頚椎損傷)
  • アプリで知り合った人と実際に会ったことがあります。手助けしてもらいながら普通にランチしました。(脊髄性筋萎縮症)
  • 意外と、障がいの有無に関係なく見てくださる方も多いので、一歩踏み出す勇気が一番大切かなって思います。(先天性小児脳性まひ)

 マッチングアプリでの苦い思い出

  • 障がいがあると分かった途端、メッセージが途絶えがち。(脳性まひ)
  • アプリで知り合った人と待ち合わせしたら、会った途端に「急用ができた」と言って逃げられました。(脳性まひ)
  • マッチングアプリは、高条件を求めてくる人が多くて疲れました。(脳性まひ)

 

【合コンについての調査】

障がい者対象の合コンに参加したことがありますか?

 合コン「行ってよかった」感想

  • 障がいのある先輩が幹事の合コンに参加したことがあります。楽しかったので、もっと行けば良かったかな。(二分脊椎症)
  • 婚活パーティーに参加したことがあります。初めから顔を合わせて話せるところにメリットを感じました。(脊椎損傷)
  • 相手も障がいがある人だと知って、少し安心した思い出があります。(統合失調症)

 合コン「ちょっと苦い思い出だった」感想

  • 障がいのことを言えなかった思い出があります。(てんかん、双極性障がいⅡ型)
  • 周りは健常者ばかりで進展はありませんでした。(両下肢まひ)
  • サクラ扱いされてしまったので、出会いは望めませんでした。(二分脊椎症)

 

【障がい者ならではの恋愛の悩み

  • みんな、どうやって出会っているんだろう?(顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー、他多数)
  • 障がいの特性を相手に理解してもらうことが難しいです。(統合失調症、他多数)
  • 相手とほどよい距離感をつかむのが苦手です。困りごとにぶつかる度に「これは私の障がいのせい?それとも健常者も悩んでいるの?」と悩んでしまいます。(発達障がい)
  • ヘルパーさんの介助が必要なので、どうしたら恋人と二人きりになれるか悩んでいます。(脊髄性筋萎縮症)
  • 一人でお手洗いが難しい女性のデート中の工夫など、教えて欲しいことがいろいろあります。(先天性ミオパチー)
  • どのタイミングで障がいをカミングアウトすればいいか悩みます。(二分脊椎症)
  • 相手から自分が苦手なことを求められたら、皆さんはどうしてるんでしょうか?健常者が自分の障がいをどう思っているのか気になります。(摂食障がい)
  • 交際できても、結婚・妊娠・出産はできるのか不安です。(先天性脳性まひ、他多数)
  • 学校も友達も職場も健常者が多いので、出会いはあっても恋愛に発展することがありません。(脳性まひ)
  • 障がい者同士が交際を続けても、収入の問題で結婚は難しかったりします。(双極性障がい)
  • 当人同士は良くても、親世代の偏見などを考えると結婚は戸惑います。(統合失調症、他多数)
  • 身近に障がい者がいない環境にいる健常者とは、分かりあうのに時間がかかります。(左大腿義足)
  • 「障がい者は子を産むな」という記事を見ると悲しくなります。確かに、子供を産んでも自力で育てられないと、社会の目は厳しいかもしれません。障がいがあっても、恋愛や結婚・子育てなどを自由に選択できる社会になって欲しいと思います。(軟骨無形成症)

 

【Co-Co Life調査部 松本純(調査員)の分析】

多くの読者が交際相手に望む条件は「障がいの有無より人柄」。障がいに理解のある相手を望む声が多く寄せられました。また、交際のきっかけは、学校や職場などの身近な場所と、SNSやマッチングアプリがほぼ同数で並んでいます。

障がい告知のタイミングや伝え方については、恋活でもぶつかる問題。プロフィールで障がいを告げるかどうかは、読者の見解は割れています。障がい告知のタイミングや伝え方については、就職などと共通の課題があるのではないかと見られます。

また、多くの人が恋愛でコンプレックスを感じる「容姿」「コミュニケーション力」「料理や家事が苦手」「経済力」の問題。恋愛に消極的な人が多いのは、求められる恋人像と自分の間でギャップがあり、障がいに負い目を感じることが原因でしょう。

ただ、「障がいは、恋愛を遠ざける理由になるか」についての質問は、パートナーの有無で答えに優位差が見られました。パートナーがいる人で「いいえ」「人による」と答えた人の数は、いない人の倍近く。障がいに理解のあるパートナーと出会って、考え方が変わった人もいるようです。

さらに、交際の先には結婚や出産などの問題もあるでしょう。読者から「交際できても結婚や子育ては不安」といった声も複数寄せられています。将来を考えると恋愛はハードルが高すぎると感じ、自分には関係のないものと捉えている人もいました。

交際以前の問題として「出会いがない」という悩みも多く聞かれます。理由として考えられるのは、障がい者の活動の場が限られ実態を知らない人が多いこと。「障がいが原因で相手と音信不通になった」という話も、「障がい者=よく分からない人」などの誤解から生じる事例でしょう。そうした偏見を減らすには、障がい者の活動の場や交流を増やすことが解決策です。違いを理解し受け入れることは、障がい者はもとより多くの人が生きやすい社会の実現には欠かせません。障がい者の恋愛事情から、共生社会の現状や課題がうかがえる調査結果となりました。