回答者 全国の「Co-Co Life☆女子部」サポーター
調査方法 インターネット調査 (アンケート)
調査期間 2019年11月20日~12月5日
対象者属性
22歳から49歳の障がい・難病当事者女性
(※ただし、アンケートに性別を問う項目なし)
障がい・難病の内訳
線維筋痛症(3)、脳性まひ(2)、知的障がい(2)、発達障がい(2)、二分脊椎症(2)、
慢性炎症性脱髄性多発神経炎、
筋痛性脳脊髄炎・慢性疲労症候群・線維筋痛症・脳脊髄液減少症・嚥下障がい・発達障がい・変形性股関節症による左下肢機能障害、
線維筋痛症、躁うつ病、潜在性二分脊椎症、精神障がい/概日リズム睡眠障がい、軽度知的障がい/解離症/適応障がい/抑うつ/気管支喘息、
左足関節機能障がい/発達障がい(ADHD)/脊髄性筋萎縮症、
ウエルドニッヒホフマン病、頚椎後縦靭帯骨化症、脊髄動静脈奇形、
視覚障害、軟骨無形成症、
先天性多発性関節拘縮症、聴覚障がい、言語障がい、肢体障がい、
心室中隔欠損を伴う肺動脈閉鎖症、 未熟児網膜症による弱視 、統合失調症、 右側同名半盲 、股関節変形 、自閉症 、脳梗塞、左半身麻痺、視覚障がい、 ADHD 二分脊椎・ぼうこう及び直腸機能障がい エーラス・ダンロス症候群、光過敏症てんかん、
重症筋無力症/脳脊髄液減少症/反応制低血糖症/アイザックス症候群、
脳卒中による下肢麻痺・高次機能障がい 、アスペルガー症候群、胸隋脊髄損傷、関節リウマチ、疾病による四肢体幹機能障がい・総排泄腔遺残症、 頚髄損傷 、頚椎脊髄損傷 精神障がい、 統合失調症感情障がい型 、線維筋痛症 、脊髄性筋萎縮症
調査サマリー
● 障がい女性目線、難病女性目線で生理を語るメディアがほぼ存在しない
● ユニバーサルデザインに対応した生理用品・トイレが少ない
● 障がい・難病の属性ごとの「生理における“特有の”困難」について、さらなるリサーチが望まれる
▼ はじめに
『Co-Co Life☆女子部 2020年春号(Vol.31』において(電子ブックはこちら)、タイトル「もっと語ろう!私たちの生理」という第一特集を組むことになった。月経(生理)について、まずは読者の現状を把握するため、編集部のメールマガジンや各種SNS(Twitter、Facebook、インスタグラム)を通じてアンケート回答を呼びかけ、48名からの回答を得た。
なお、今回の調査は字数の都合上誌面に掲載できず割愛したものを中心に述べる。
▼ 特集企画の背景
かねてより一部の編集スタッフの間では、「障がい女性・難病女性の生殖と性(リプロダクティブ・ヘルス、ウィメンズヘルス)」をテーマに扱いたいという要望が存在していた。
扱いたいことは広範囲にわたる壮大なテーマではある。しかし中でも、多くの読者にとって特に身近である「月経(生理)」について焦点を当てよう、という考えが筆者をはじめとするスタッフの間で2018年ごろより共有されていた。(以下、「月経」よりも社会的な認知度や使用度が高い俗称としての「生理」という言葉を本稿では使用する。)
女性読者をターゲットにした商業誌メディアにおいて、生理は健康問題の一つとして頻繫に取り上げられる。
しかし、障がい女性・難病女性の当事者目線から語られた生理については、ほとんど目にしたことがない。そのため、『Co-Co Life☆女子部』で特集を組む意味があると考えた。
また同時に、2018年~2019年の間にインターネットメディアにおいて、「生理」について“健康問題”という文脈だけでなく、エンタメを目的とした漫画のテーマとして描かれたり、生理用品のデザイン、利便性などについて取り上げられるようになった。
具体的には、「生理」を擬人化したキャラクターが主人公の漫画単行本の発売¹や、生理用ナプキンについての企業キャンペーンの開始、「生理」に特化したオウンドメディア³が登場するなど、女性の健康という観点から「生理」について語られる現象が多くみられた。この社会的な機運の高まりに乗じ、『Co-Co Life☆女子部』でも2019年の11月から準備を始め、2020年2月末発行の春号(Vol.31)において、第一特集として「生理」に着目することとなった。
[1] 漫画家兼イラストレーター・小山健による『生理ちゃん』単行本の第1巻が、KADOKAWAより2018年6月に発売された。単行本は、インターネットメディア『オモコロ』にて2017年1月から発表された作品をまとめたもの。同作品は、2019年・第23回手塚治虫手塚治虫文化賞を受賞した。
[2] ユニ・チャーム株式会社が、2019年6月より生理用品ブランド「ソフィ」を通した特別キャンペーンを行うことを発表した。“女性がより自分らしく過ごせる社会を目指し、自分に合った生理ケアを行う”ことを目的とし、『#NoBagForMe』というプロジェクトを始めた。このプロジェクトを通じ、生理用品デザインの見直しや、生理を語ることのタブーを打ち破る取り組みを行った。
[3] 2019年2月に登場した『ランドリーボックス』https://laundrybox.jp/ は、「自分と生理に本音で向きあい、自分らしく過ごすため」という目的を掲げる。生理に関する記事を閲覧したり、自分のニーズにあった生理グッズを探して購入できたりするメディアコマースである。
▼ アンケート回答数について
まず第一に、生理に関するアンケートは、『Co-Co Life☆女子部』の歴代のアンケートの中でも特に回答数が少ない結果となった。この要因はいくつか推測で考えられる。
1:アンケートが3種類重なる中での告知となり、アンケートの周知が行き届かなかった。
2:「生理」というテーマについて、心理的なハードルがあった。
3:氏名・メールアドレスなどの属性質問を含め、全20問と設問数が多く、途中で回答を諦めた人もいる可能性がある。
しかし、数は48名と少ないながらも、多種多様な障がい・難病の当事者が回答を寄せてくれることとなった。
▼ 設問について
以下に全設問を紹介する。
本稿では、この設問の中から特に解説を加えたい回答結果について次の項で述べることにする。
Q.「生理」は、毎月定期的にありますか?
Q.障がい・病気などによる「あなたの生理の特徴」について、何でも教えてください。生理周期や、ヘルパーさんとの共同作業がある……などなど何でもOKです。※生理時のお悩みや疑問については、後半の質問で伺います。
Q.初潮(人生でいちばん最初の生理)が来た年齢を教えてください。
Q.初潮時のエピソードが何かある人は教えてください。(特にない人は、年齢だけでOKです)
Q.「生理」について、自分の中でどんなイメージを持っていますか?
Q.生理用品(サニタリーショーツを除く)は、主にどんなものを使っていますか?
Q.あなたの生理用品(サニタリーショーツを除く)について教えてください。どんな風に生理用品を選んだり、使い分けたりしていますか?お気に入りの商品やアイテムがある方は、ぜひ教えてください。
Q.サニタリーショーツなど、生理のときに身に着けるものはどんなものを使っていますか? ポーチやミニバッグなど、持っていくものでもOKです。
Q.生理の前、体調や気分の変化はありますか?
Q.体調や気分の変化があると答えた人は、どんな風に変わりますか?
Q.生理が「来る前」についてのお悩みや疑問について教えてください。
例)生理が来る3日前から食欲が急に増えて、食べても食べても満足がいかなくて困る・気分の落ち込みが激しく、涙が出る……などなど
Q.生理「中」についてのお悩み・疑問・グチについて教えてください。生理痛のこと、生理用品のこと、メンタルに関すること、ヘルパーさんのこと、彼氏や家族に関わること、とにかく何でも結構です。
例) 自分の身体にあうナプキンがなかなかなく、いつもベットを汚してしまう・外出時、ナプキン入れの蓋を外せなくて困ってしまった……などなど何でも!
Q.生理に関することで、これまで婦人科のお医者さんに相談したことはありますか?婦人科の先生(お医者さん)に、生理のことで聞いてみたいことを教えてください。
Q.「生理」や「生理の日」のことは、なんと呼んでいますか?
例)そのまま「生理」と呼ぶ、「女の子の日」と言っている……などなど
▼ アンケート結果を受けての考察
複数回答により、主に使う生理用品について答えてもらった。こちらでは紙ナプキンに答えが集中したが、コメント欄にて成人用おむつ・またはおむつ型紙ナプキン、尿取りパッドを使うこともあると回答する方も複数いたため、おむつ使用者・尿取りパッドの数字は実際よりも高いと思われる(より精度の高い再調査が望ましい)。
おむつを使用する理由としては、経血量の多さや長時間利用をカバーするためや、身体的要因や環境的要因により気軽にトイレに立ち寄って生理用品を交換できないため……など。尿取りパッドに関しては、障がいによって普段から尿取りパッドを使用している方が生理用途にも継続して使っている、という回答が見られた。(なお、生理用品よりも尿取りパッドを選択する詳しい理由については、自由回答では得にくく、追加の聞き取りや調査が必要といえる。)
今回は、広くどんなアイテムが使われているか回答してもらったが、各生理用品・介護用品の使用感について、より詳しく・細かく聞く必要性も感じた。指、手に障がいがある人の生理用ナプキン・タンポンの使いにくさや、尿取りパッドに経血を吸収させるときの不快感、視覚障がい者にとっての不便な点など、探ればより当事者のニーズや生理用品の課題点が浮かび上がる可能性を感じた。
この設問では、9割もの読者が「体調・気分の変化がある」と回答。その具体的な悩みも様々だが、こちらは障がいに特化した悩みよりは、いわゆる女性全般に共通するPMSとしての悩みが多かった。イライラ、抑うつ、食欲増進、頭痛など。