障がい者のファッションに関する調査

【実施の背景】
「ファッション」それは、人生を豊かにするうえで、欠かせないもののひとつである。 私たちは好きな洋服を身に纏うことで自分をアピールしたり、新たな世界を広げることができる。 障がいがある人にもそれは変わりない。 一方、国内のファッション業界に目を向けると、少子高齢化の人口減少に伴い、需要は落ち込み傾向にある。 2016年に取りまとめた「アパレル・サプライチェーン研究会報告書」を見ると、1990年から2010年で市場規模は40%ほど縮小している。 また、販売形態もインターネットへ移行し、業界全体で大きな転換期を迎えている。 このような状況だからこそ、今までマーケットとして検討の場に上がることの少なかった障がい者がどのようにファッションを楽しんでいるのか、ファッションにおける悩みはなにかリサーチしてみた。
【調査対象者】
全国の『Co-Co Life☆女子部』読者サポーター
【調査方法】
インターネット調査
【調査期間】
2019年10月
有効回答数:197件
【対象者属性】
【調査サマリー】
Q1:あなたは月にいくらファッションにお金をかけていますか?
Q2:かけられるなら、月にいくらファッションにお金を掛けたいですか?
Q3:ファッションの中で1番お金をかけているのは?
その他の回答
・全身痛患者でも1日着たまま外出できる服
・アクセサリー
・スポーツウエア
Q4:あなたの好きなブランドを教えてください。
・zara
・UNIQLO
・イッセイミヤケ
Q5:障がいのある人のための洋服を制作しているブランドをしっていますか?
●ピロレーシング
●ユナイテッドアローズ
●エスプリロープ
Q6:あなたの障がい特性ならではの、洋服を選ぶポイントを教えてください。(複数回答可)
Q6-2 :Q6で「着やすさ」を選んだ方、具体的などんな部分の着やすさを重視しているか教えてください。
●ボタンやファスナーがあまりない服を選んでいます。
● ズボンだと転倒しやすいので、スカートを選びます。
● 型崩れしにくい、肩がこらない
● ウエストがゴム製だったら、最高です!
●縫い目に骨が当たらないか、1人でも脱ぎ着ができるか考えます。
● トイレ時のボトムの脱ぎやすさ
Q7:「本当は着てみたいけど、着るのが難しい洋服」はありますか?
【トップス】
● 胸元にボタンがあったり、ツルツルした素材の上着
● 背中にファスナーがあるワンピース
● 線維筋痛症で痛みが出るので、もう何年もブラジャーをしていない。 胸の形がカッコイイ服を着たい。
● アイラインTシャツ・ドルマンスリーブ・鎖骨の出るもの
● ブラウスやシャツなど、前開きのボタン
● 色の薄い洋服(車いすですれて汚れるので着なくなった)
【ボトムス】
● ジーンズは車いす利用者になってから着脱しにくいという理由で着れなくなったので、また着たいなと思っています。 以前はジーンズショップで働いていたこともあるので少し悲しい。
● スカート。 車いすを使っているため、巻き込みや乗り移りのときに邪魔になる。 それと、足が異常に細く変形もしているため、足を露出するのは気持ち的にもハードルが高い。 ストッキングやタイツを履くのが難しい(苦手意識も強い)し、ヒールのある靴は股関節に負担がかかるので、スカート類は避けています。
● 生地が伸びないもの
【その他】
● 私は跣足があるので、普通の可愛い靴が選べません。
● 値段の高い服。 経済的に購入できない。
● ベルトが結べない
● 服ではなくカバンですが、左胸に植えたICDが圧迫されるので、リュックサックが背負えなくなった。
Q8:あなたは普段、どこで買い物をしていますか?
Q9:他の人におすすめしたい、バリアフリーな店舗を教えてください。具体的な「店名」と「どんな部分がバリアフリーか」もお書きください。
●マルイの有楽町店に障がい者用の試着スペースがある。広くて、横になりながら試着ができる。
●ユニクロ:ラゾーナ川崎店。店舗全体に段差がなく、大型店舗ということもあり、通路幅が広めである。
●六地蔵のmomoテラス。ユニクロもGUも入っていて、エレベーターも大きくて、駐車場が満車になることはないくらい大きい。結構ベビーカーなども見ます。どの店舗もフラットでバリアフリーだったと思います。
●そのような店舗があるのであれば、教えて頂きたいです。
● 今のところ、見つかっていない。
●イオンモールの大きいサイズのコーナーには、安くて柔らかい生地の可愛い洋服が安価で売られていました。東京に来てから、イオンモールを見かけないのでとても残念です。ヘルパーさんが、移動支援で来てくださる時には、お手伝いをしてもらって試着をしました。ですが、実際に働いているヘルパーさんはあまりにも少なく、高齢化が進んでいるため、移動支援はほぼ不可能な福祉でした。
だから、独りで買いに行った時には一旦お支払いをして商品を持ち帰り、自宅で着てみて、サイズや生地の確認をします。これはダメだという商品は、レシートと洋服の札などを切らずに持っていくと、返金してくださいます。対応の意味でも、そして何より比較的安価なので、買い替えがしやすく、それなりに可愛い服やカッコイイ服もどんどん増えてきたので、イオンを全身痛などの患者さんと車いすユーザーさんにおすすめしたいです。
Q10:あなたはフリマアプリを使用したことがありますか?
Q11:どのようなアプリを使用しましたか?
Q12: フリマアプリを使用する際に、良かったこと・悪かったことを教えてください。
【良かったこと】
● 好きなブランドが安く買える場合がある!
● ハイブランドが安いです!
● しわにならないように丁寧に包んでくれる方ばかりです。
● ゆっくり選べる
● 配達してくれるので楽
● お店に行くのが難しいときに便利です。
【悪かったこと】
● 振り込み後、出品者と連絡が途絶え、運営側から返金してもらう。
● 買う前に、自分の病気では前の使用者が使用している洗剤や柔軟剤など置かれている状態がわからないので利用できない。
● 関わる相手は、自分のことを健常者だと思って接してくるので、たまに困ります。
● 梱包までしたのに、相手先と連絡が取れなくなったり、相手先と連絡が取れなくなったり、相手に連絡を取っても、連絡が一言もなく、送って良いのか悪いのか判断できないことがあったり、困ることがよくある。
● 「値下げ不可」と記載している商品にやたらとしつこく値下げ交渉してくる人がいて疲れてしまうこともしばしば。
● 写真を載せているのに「思っていたのと違うから、返すか捨てるか」と言われました。返すとなると着払いとなるので捨ててもらうことにしました。もちろん売り上げもキャンセルです。はじめからタダでもらうつもりだったのかと思いました。
Q13: あなたはどのように、ファッションに関する情報を集めていますか?最も当てはまる手段を以下よりお選びください(複数回答可)
Q14:洋服をリメイクしてくれるお店や、オーダーメイドを利用したことはありますか?
Q15:Q14で「はい」と回答した方に質問です。具体的にどのお店のどんなサービスを利用したことがありますか?
● マジックミシン
▷コートのすその長さを切った
▷スーツのボタンをマグネットに変え、袖つけを楽になるようにマチを入れて、スカートのウエストをゴムに変えた。
● お直しコンシェルジュ ビッグママ。アウターや上着の肩幅、袖丈、パンツの裾上げとボタンをフォックに変えて貰ったり、車いすのレインコートをオーダーしました。
● マルイでズボンの裾上げをしてもらった。
● フリーゲイド義肢研究所というところで、オーダーメイドの靴を作ってもらっています。
Q16:オーダーメイド(セミオーダー)をしたことがあるアイテムを教えてください。
Q17: オーダーメイド(セミオーダー)料金はいくらでしたか?
Q18:ファッションアイテム購入時の困りごとを教えてください。
● 条件が多すぎて、なかなか予算内で条件に合うものが見つからない。着替えに介助がいるので、試着ができない。
● 店員さんとのコミュニケーションが一番困ります。サイズを尋ねたくても、筆談に応じて貰いにくいです。
● 見たい服が取れない
● 座った状態でどんな風になるかわからない。
● おしゃれで可愛い靴がなかなか見つからない。
Q19:そのお悩みはどうすれば解決すると思いますか?
● 試着室がもう少し広ければ良いなとおもう。
● タブレットがあれば解決するかも?在庫管理もされるでしょうし。
● 陳列棚を低くしてほしい。
● 座ったマネキンを用意する
● 歩行障がい者のための靴ブランドがあればよいかも。
Q20:あなたにとって、ファッション・おしゃれとは?自由にお書きください。
● お相手へのリスペクトを表すもの。人柄を表すもの。 自分を大切に思い、相手を思うからこそ、こだわりたい部分。
● 仕事の上でも、プライベートでも欠かせない自己表現
● 私にはハードルが高いです。でも、車いすになった今は外に出るのがまだ周りの視線が痛いので、ちょっとでも可愛いものを着ることで外出を気持ち的に楽にするものです。
● 人間の自信があるかどうか。以前はオシャレもお化粧も楽しかったですが、病状が悪化してからは、食べて吐いてお酒を飲みまくって、が中心で外に出ることもありません。旦那と外食、外出は負担でしかありません。心の価値がない私はお洒落したくとも資格がないと思います。
● 諦めなければならないこと。妥協が必要だったりすることもあるけれど、工夫次第で新しい自分に出会えたりする。
【Co-Co Life☆調査部 榎本佑紀(調査部員) の分析】
2020年の東京オリンピック・パラリンピックを目前に、誰もが利用しやすい「ユニバーサル・デザイン」への注目度が増しています。他にも、日本の超高齢化社会に向けて障がいのある高齢者層の拡大や、国連が策定した2030年までの持続可能な開発目標「SDGs」なども注目に拍車がかかっています。一方、今回の調査を通じて、ファッション業界におけるユニバーサルデザインはまだまだこれからだということを感じました。
アンケートを通じて「自己表現」や「理想の自分になれるもの」というような障がいのある・なしに関わらず、自分らしいファッションを楽しんでいるモニター(サポーター)の姿が目立ちました。
その一方で、障がい種別によっては自分の着たい洋服を諦めなければいけなかったり、金銭的余裕がなく、新しい洋服を購入出来ないという意見もありました。
「洋服を購入する際の困りごと」として挙げられたのは「試着室が狭くて入りにくい」「自分のサイズに合った服がない」というものでした。それに対する解決策として「車いすでも入れて、通路も広い試着室を利用する」「サイズ展開の多い店や、お直しを利用する」というアイデアが寄せられました。
「あなたの障がいならではの、洋服を選ぶポイントを教えてください。」という項目では、着やすさを選ぶモニター(サポーター)が最も多く、次いで「デザイン」となりました。
以上のことから、モニターのみなさんが「デザインがよく、機能性にも優れているもの」を求めていることが読みとれます。
また「本当は着てみたいけれど、着るのが難しい服はありますか?」という質問の回答を通じて、皆さんが様々なジャンルの洋服に挑戦してみたいことがわかります。
トレンド性と機能性の両方を重んじるファッション業界において、何をすれば「ユニバーサルデザイン」を取り入れることになるのか、具体的な商品化には難しさもあるのかもしれません。ただ、アンケートから多くの当事者がファッションを楽しみたいと思っていることが明確になりました。この調査をきっかけに多くの障がいのある人たちが好きな洋服を身に纏い、自分をアピールしたり、新たな世界を広げるキッカケとなるように願っています。