【実施の背景】
障がいを持つ人のスマホ利用の実態を幅広くたずねるアンケートを実施。
読者とスマホの関係性を知り、障がい者のニーズを探る目的で調査しました。
【調査対象者】
全国の「Co-Co Life☆女子部」サポーターおよび読者
【調査方法】
インターネット調査
【調査期間】
平成22年9月26日~10月9日
有効質問回答者数:69人
【調査結果サマリー】
- 半数程度の人がスマホを障がいのサポートに活用している
- スマホがないと「非常に困る」「生きていけないと思う」という回答が約7割
- SNSの利用は9割以上、「情報を発信している」と答えた人は約6割
- 電子マネーの利用者(これから使う予定も含め)は約7割
【読者のスマホ利用】
■スマホの機種は、android?iPhone?
■スマホを持つ目的は何ですか?(複数回答)
■1日のうち、スマホを見る時間はどのくらいですか?
■スマホでよく見るコンテンツは何ですか?
■よく使うスマホの連絡手段は何ですか?
【スマホを活用した障がいサポート】
■スマホの機能を障がいのサポートに役立てていますか?
■障がいのサポートに使うスマホの機能は何ですか?
✅障がいのサポートに「スマホの機能」をどのように活用していますか?
- 車椅子からは見えない仕事場の高い棚の中を、スマホのカメラを使って画面越しに確認しています。目線が高くなった気分です(先天性骨形成不全症)
- アクセシビリティのスイッチコントロール・AssistiveTouch・ポインタコントロール・ショートカットは、体が動きづらくてもスマホが操作しやすくなる機能。音声入力、マウスやタッチセンサーの調整、視線入力に使えます。(肢体障がい・難病)
- iPhoneの画面に表示される内容を音声で読み上げる「VoiceOver」。画面を見るのが難しい時に、情報を音声に変換する便利な機能です。ラウザの検索結果や情報もすべて読み上げ、画面がロックされたときは暗転したことを「画面非表示」と音声で通知。読み上げ音声の速さも調節できるので、ストレスなく使えます。(多発性硬化症)
- 関節の動きが悪いと入力に時間がかかるので、音声入力を活用しています。(強直性脊椎炎・線維筋痛症)
- スクリーンショットを撮ることが、難しいので、iPhoneのアクセシビリティ設定で設定をする事により、ボタンを押して選択(タップ)するだけで、スクリーンショットが撮れて便利です。(急性脳症後遺症 )
- スマホを耳の位置で持ち続けるのがしんどいので、通話時にスピーカー機能を使っています。筋疾患の私にはとても有り難い機能です。(先天性ミオパチー)
- 電話リレーサービスが便利です。(聴覚障がい、うつ病)
- iPhoneのヘルスケアを体調管理に役立てています。日々の歩数や体重の変化が見られます。(精神障がい)
- メモ機能を活用して気にかかる症状をまとめています。まとめた内容を診断の際に先生に伝えるとやり取りがスムーズです。(精神障がい)
- アラームで薬を飲む時間を忘れないようにしています。(双極性障がい、自閉症スペクトラム、ADHD)
- 言語障がいがあるので、伝わらないときにメモ機能を使います。(脳性まひ)
■障がいのサポートに「アプリ」を使いますか?
✅障がいのサポートに使っている「アプリ」を教えてください?
- スマホで障がい者手帳を見せられる「ミライロID」は、毎回手帳を出すのが嫌な人におすすめ。IDに登録するとスマホ一つで障がい者割引などが受けられます。(自閉症スペクトラム)
- 「NAVITIME」は、障がい者無料パスが使える所を探せるのでとても便利。「ミライロID」は、コンビニやレストランの割引券クーポンの配信もあるのでお得です。(性分化疾患・双極症障がい)
- 「メディカルID」を日々の体調管理に活用。スマホの視線入力はAccessを使っています。(身体障がい・多発性硬化症)
- アプリの生理予測を見て、躁鬱や情緒不安定になる時期を予想しています。(双極性障がい、自閉症スペクトラム、ADHD)
- 「いつでもおかえり」「死にトリアプリ」など、メンタル面をケアするアプリを入れています。(統合失調症)
- 体調管理アプリ「頭痛〜る・welllog」を使っています。(難病・双極性障がい・発達障がい・呼吸器障がい)
- サンドラッグのお薬手帳と処方箋を送る機能が付いたアプリを使用しています。病院の診察が終わってから送っておくと、家の近くの薬局に行き着くまでの間に、大量の薬の準備を終わらせておいてくれます。(脊椎関節炎、化学物質過敏症)
- 家電の遠隔操作に「Alexa」や「Switchbot」を利用しています。(脊髄性筋萎縮症)
- 「ネット119」「ネット118」に登録しています。パニックや喘息の発作があると説明が上手くできないので、警察や救急のサービスに登録しておくと安心です。(知的障がい・精神障がい・気管支喘息)
- 「らくらくおでかけネット」車椅子での駅の情報がわかるので、普通の乗り換え案内よりも移動時間が的確にわかります。(横断性脊髄炎)
- 「zoom」。これまで参加出来なかった遠方の講演会などに参加できるようになったので、人とのつながりが増えました。(両上肢・体幹機能障がい)
- 音声を文字に変換して画面に表示するアプリ「UDトーク」を使っています。(聴覚障がい)
- 「Googleマップのストリートビュー」で、行きたいお店の入り口に段差がないか確認しています。(先天性骨形成不全症)
- 漢字の読み上げに「Google翻訳」を活用しています。(知的障がい・身体障がい)
- 「UDCast」や「HELLOMOVIE」と言った、映画に音声ガイドを付けられるアプリ。観たい映画の音声ガイドがあれば、映画館で映画を観ながら音声解説が聞けて、映画をより楽しめます。(弱視)
- 「リマインくん」。後で思い出したい事をメモしています。(脳性麻痺、知的障がい、自閉スペクトラム、強迫性不安障がい)
- 「KeepMyNotes」。重要なことをメモに残しています。(自閉症スペクトラム)
- 忘れっぽいので、「LINEのリマインダー」機能を使っています。後で思い出したい事を入力して必要な日時にLINEで連絡が来るようにしています。(特発性過眠症、ADHD)
■アプリにどんなサポートが欲しいですか?
✅こんな「アプリ」があればいいな!を教えてください
- 「災害時の障がい者対応の避難所など、地図上で把握できる『バリアフリーマップ』」(先天性ミオパチー)
- 「視線を認識して写真を撮影できるアプリ」(10代・肢体不自由・MS、CIDP)
- 「手話通訳アプリ。聴覚障がいの人と気軽にお話したいので」(30代・過敏性腸症候群、強迫性障がい)
- 「痛みの程度を記録できるアプリ」(20代・線維筋痛症・強直性脊椎炎)
【障がい者とSNS】
■SNSを利用していますか?
■よく使うSNSアプリは何ですか?
■SNSで同じ障がいを持つ人と交流はありますか
✅読者のSNS事情
- LINEオープンチャット、Facebookの発達障がい当事者会に参加しています。(脳性麻痺、知的障がい、自閉スペクトラムほか)
- 10年前にmixiで出会った10歳年上の女性とお友達になりました。彼女がいたから1番つらい時期も乗り越えられたと思っています。(過敏性腸症候群、強迫性障がい)
- 外出が難しく交流会に参加できないのが悩みですが、同じ難病を持つ人の動画配信を見て楽しんでいます。(髄膜脳炎後遺症)
- Facebookで患者会を見つけて入っていて、今の主治医に出会うきっかけになりました。(脊椎関節炎、化学物質過敏症)
- にじのこころというセクシャルマイノリティと精神疾患の両方を持つ人のための自助グループに参加しています。チャットやLINEでコミュニケーションできて、ダブルマイノリティの心の支えになっています。(性分化疾患・双極性障がい)
- Metatropic Dysplasia Around the Worldで海外の同じ障がいの方と交流経験があります。(変容性骨異形成症)
- 交流するのは苦手なので、同じような悩みを持つ人を観察しています。(自閉症スペクトラム)
- 以前同じ疾患を持った方と交流をしたことはありますが、悪意のある行動や相手の妄想による根も歯もないことを吹聴されたことからSNSでは病気のことは伏せるようになりました。そのことから、障がい者のコミュニティ参加に二の足を踏んでいます。(精神障がい)
【スマホと買い物】
■電子マネーを使っていますか?
■よく使う電子マネーは何ですか?
✅電子マネー利用者の声
- 財布からお金を出すのが大変なので、スマホ決済はありがたい」(脳性まひ)
- 「杖や車いすで手が塞がるとすぐに移動ができないため、早くレジから離れることが出来なかったが、今は商品を受け取ったらすぐにレジから離れる事が可能になり、精神的な圧迫感が減った」(下肢障害、原発性胆汁性胆管炎)
■フリマでモノを売り買いしたことはありますか?
■よく使うフリマアプリは何ですか?
✅フリマ利用の感想
- 文章だけで売買が可能なため、言葉遣いにさえ気をつければ円滑な取引が出来るため利用がしやすい。(30代・精神障がい)
- 視力が弱いと写真や説明を載せるのが不便です。(視力障がい)
- ジモティは自宅まで取りにきてもらえるメリットがあります。(シェーグレン症候群)
- 障がいを隠してできるのがいいと思います。商品を説明するのがめんどくさい。(知的障がい、精神障がい、気管支喘息)
- 日常生活になくなっていた達成感を味わえます。(混合性結合組織、肺高血圧症ほか)
■あなたにとって、スマホとは?
✅災害や事故などでスマホがあってよかった経験はありますか?
- 「地震が来た時にアラームがなるので、窓際から離れたり出来る」(20代・脳性麻痺、体幹機能障がい)
- 「ヘルスケアでメディカルIDを設定しているため、倒れて意識がない時でもちゃんと必要な情報を伝えられました」(10代・肢体不自由・MS、CIDP)
- 「深夜に大雨警報が出た際、地域の河川の氾濫状況を定点カメラ映像などから把握できて有り難かったです」(30代・先天性ミオパチー)
- 「ネットやアプリから警察や救急車を呼べるようにしています。倒れた時のために携帯に必要な連絡事項を入れています」(30代・知的障がい、精神障がい、気管支喘息)
- 「困ったことをTwitterやSNSで発信したら、沢山の方がアドバイスをくれて助かりました」(30代・横断性脊髄炎)
- 「東日本大震災のとき、Twitterで給水場所などの情報を知れて助けられました」(30代・脳性麻痺)
- 「電話がつながらなくてもLINEで連絡を取れました」(30代・脳性まひ)
【Co-Co Life調査部 松本純(調査員)の分析】
今や国民の9割が持つスマホは、障がい者にとっても「なくてはならないもの」だという調査結果がでました。
スマホでよく見るコンテンツをたずねたところ「SNS」と答えた人が最も多く、全体の6割にのぼりました。総務省の調べでは(参考:「令和3年度版 情報通信白書」)、インターネットの利用で「SNS」と答えた人は5割弱という結果なので、一般のデータよりもより積極的にSNSを利用していると言えそうです。SNSで障がいや病気について調べたり、自ら情報を発信する人が多く、「障がいを持つ人同士のつながり」を求めて利用していることがわかりました。悩みを相談したり励まし合ったりすることで、障がいを乗り越えようとする回答が多く寄せられました。
障がいのある・なしを問わず急速に普及した電子マネー。特に、財布を素早く取り出せない人には便利な仕組みです。反面、視覚障がいや盲ろう者には不便な点が見られます。これらの障がいを持つ人も使える仕組み作りが必要でしょう。
障がい者にとって、自分を補う相棒にもなるスマホ。障がい者向けのアプリだけでなく一般向けの機能も困りごとのフォローに役立てていました。
視覚情報中心のスマホは、恩恵を受ける人と取り残される人で明暗が分かれる恐れもあるでしょう。読み書きやタッチパネルの操作が苦手な人も使えるよう、スマホのさらなる進化を望みます。どんな障がい者も取り残さないものは、健常者にとっても使いやすいはずです。