2024年4月1日の「障害者差別解消法」改正に伴い、いわゆる合理的配慮の民間義務化が始まりました。
各企業が展開するウェブサイトについても、障がいがあっても正しく情報接触ができることが求められます。
罰則規定のない合理的配慮の義務化ですが、ウェブアクセシビリティ非対応の場合の現実的なリスクに関して、以下の通りまとめました。
特定非営利活動法人施無畏
代表理事 遠藤 久憲
1)法令遵守(コンプライアンス)に対し、企業としても姿勢が問われる
罰則なしとはいえ、「障害者差別解消法」という法律に違反状態になります。合理的配慮の規定の中に「事業者の過重な負担がない範囲で」という注釈がありますが、ある程度の資本力のある企業であれば、ウェブアクセシビリティ対応は過重負担に該当しないと思われます。
コンプライアンスで一番考えられるリスクとしては、株主総会等で株主から「コンプライアンスに対する姿勢」を現経営陣が問われることが考えられます。
2)障がい当事者からの訴訟リスク
日本はあまり訴訟国家ではありませんが、海外では訴訟事例があります。障がい当事者から企業のウェブサイトへ情報接触ができないことに訴訟が発生し、企業側が敗訴している事例があります。
仮に日本においても、同様の訴訟が起されれば、企業側が敗訴する可能性が高いと予想されます。個人からの訴訟に対してリスクマネーをプールしている企業もあると思いますが、賠償金の支払い以上に、企業イメージの失墜がリスクとして大きいでしょう。
3)障がい当事者発信によるSNS炎上
日本における訴訟リスク以上に現実的に高いのは、個人による情報発信リスク。「あの企業は障がい者に対して、全く情報保証がされていない」と個人SNSにポストされて、それがリポストされ企業に対する批判炎上につながることは想定されます。
特に指摘したのに未対応の場合などに炎上は起きやすいので、ウェブアクセシビリティが現実的にすぐに対応が無理でも、期限を決めた方針をサイトに掲出することが望まれます(ウェブアクセシビリティ方針の掲出)
上記3点の他にも、事業を担当する大臣から報告を求められたり、助言や指導、勧告されたりする場合もあります。これは、同一事業者がくり返し障害をもつ人の権利や利益を侵害し、自主改善を期待できない場合に取られる措置ですのでケースとしては少ないと思われます。
やはり一番のリスクは「企業として法令遵守の姿勢」が問われ、企業のブランド価値が毀損することが一番のリスクとなります。