実施の背景
「恋愛調査」自体は、世の中に多く溢れている調査項目の一つです。一方「障がい者の恋愛事情」となると語られることが少なく、その実態についてなかなか目にする機会がありません。そこで今回は障がい者の恋愛について調査いたしました。特に現在、交際相手のいない方々が、どのような恋愛観を持っているのかについてまとめました。
調査対象者
全国の「Co-Co Life☆女子部」サポーター
調査方法
インターネット調査
調査期間
2018年9月~10月
有効回答者数:140名
対象者属性
▻女性の割合が86%
▻年齢の割合は20代~30代合計で71%
▻身体障がい者が69%
調査結果サマリー
●2人に1人が、交際相手や結婚相手などのパートナーがいる。
●交際相手に求める条件は「障がいを理解してくれ」が1位。続いて「思いやり」「誠実さ(浮気しない)」となる。
●恋愛するにあたってのコンプレックスについて82.9%の人が障がいをコンプレックスやハンデに感じたことがある。
詳 細
1)現在の交際状況を教えてください。

2)今まで誰かと交際したことがありますか?

3)交際相手がほしいと思いますか?

4)交際相手に求めることは何ですか?(複数回答有)

5)恋愛するにあたって、障がいをコンプレックスやハンデに感じたことはありますか?

【はい=コンプレックスやハンデに感じたことがある】
●車いすなので、デートで相手のいきたい場所に行けず、迷惑をかけてしまう。
●杖をついており、手が繋げない。うつ症状によって、デートの予定を突然キャンセルしなければならない。
●お手洗いや外出が一人でできないため。
●聴覚障がいがあるため、健聴者と上手くコミュニケーションが取れない。
●容姿ですぐに判断される。
●前に付き合ってた人に、意を決して障がいを告白したら別れを告げられた。
●相手方の家族に「お付き合いはいいが、結婚はだめ」と言われた。
【いいえ=コンプレックスやハンデに感じたことはない】
●お互いに障がいがある人だったため、障がいがあることが当たり前という前提だったから。
●障がいを含めて、自分だから。
●すべては個性になるし、それは武器にもなるから。
●障がいがあることは変えられないから。
●障がいがあることで相手から拒否された、という経験はないので。(たまたま運がよかったと思います)。
●障がいを理解してくれる人が第一条件で、「理解しよう」と歩み寄れない器の狭い人とは付き合えない、と考えているので。始めから障がいによる得意・不得意をカミングアウトしているから。
●素の自分を見て欲しいから、障がいは関係ありません!
●相手に理解があればいいと思います。
●障がいの有無に関係なく、困難はあるから。
●これまで特に問題なく恋愛をしてきているので。
●障がいの程度が軽いため。
●相手が健常者であっても、できることやできないことがあるように、その辺は関係ないと思う気持ちがあるからです。
6.交際相手ができたら障がいのことを伝えたいと思いますか?

【はい】と回答した理由
●隠し通すのは難しいし、隠すことでもないから。
●障がいがある状態は変わらないので、なるべく多くのことを知ってもらいたいと思います。それに、私だって、彼のことをたくさんたくさん知りたいと思います。
●隠し通すことは難しいと思うので、最初に障がいの事をお話して、相手の方に理解してもらった上で交際する方が、自分も自然でいられる。相手方もあまり気にしなくていいように、オープンに話すようにしています。
●全て知って欲しい。あと、隠すようなことじゃないと思うから。
●病気の事をしっかり理解してほしいから。
●障がいについて理解してほしいから。
●私の事を理解して欲しいから。
●自分を知ってもらいたいから。「障がいも含めて」が私だから。
●わかってもらいたい!
●手伝いが必要なところ、いらない所、不便なこと、便利なことや、いろいろな気持ちを知ってほしいから。
●伝えずに付き合うと、隠すことに必死になって疲れるから。
●相手に自分の障がいを隠したまま生きていくのが、辛いから。
●障がいを隠すことによって生じる、矛盾をなくしたいから。
●急に体調が悪くなったり、障がいや薬の事などを理解してもらわないと、難しいと思う。隠して付き合うのは相手に失礼。あと、私は目に見える障がいなので。
●もし私の持つ病気(障がい)について理解していなかったら、あとあと面倒になりかねない。
●私の障がいや病気を話した上で、本当に私で良いのかを話したい。将来を考えると、相手の人生もある。健康な女の子となら、冬にスキーに行ったり夏に山登りをしたり。そういう当たり前が、当たり前にできるのに、私はそれができない。
【いいえ】と回答した理由
●距離を置かれそう。男の人は、特にプライドが高いので「障がい者と付き合っている自分」っていうのが、嫌になる気がします。周りの目も気にする。もしくは、付き合ってることさえ隠す人もいると思う。
【Co-Co Life調査部 元山文菜(調査員)の分析】
障がいのある人たちの恋愛事情はどうなっているのでしょうか? 毎日の生活を送るなかで「障がい者は恋愛に消極的」「恋愛のパートナーがいる人も少なそう」と印象を持たれているように感じます。
今回、調査した「Co-Co Life☆女子部」サポーターは、約半数にパートナーがいることが判明しました。そして、現在パートナーがいないものの、積極的に恋愛をしたいと考えている人は、86.7%を超えています。
一方、障がいを恋愛面でのコンプレックスだと感じている人は82%。恋愛をするための具体的な活動をしている人の割合も23%に留まっていました。積極的に恋愛したいと考えながらも、障がいをコンプレックスに感じ、一歩を踏み出せない状況になっているようです。
コンプレックスに感じている理由についての回答は、大きく3つに分類することができました。
まず第一は、出かける時もバリアフリーの場所を探さないといけないこと。解答欄にも多くのコメントが寄せられましたが、日頃のヒアリングでもこんな声をたくさん聞きます。
「体力の関係で、普通のデートができない」「手足が不自由で、生活全部が全介助なので」「ヒールが履けないから、オシャレの幅が少ない」「足を曲げられないので性生活ができない」など、障がいの状態により、物理的にできないことがあり、それが障壁となりコンプレックスにつながっています。
第二は、「障がいがあることで、発言や行動を誤解されたことがある」。障がいを理由にパートナーに振られたり、相手のご両親から認められなかったり。相手に障がいを打ち明けると連絡が取れなくなったり、デートで杖(つえ)を見て戸惑われ、二度と誘われなくなったなど、障がいに対する偏見や先入観が原因となり、つらい経験をしたケースも散見されました。
最後は「こんな自分をパートナーが理解してくれるのか、という不安」です。自分を、普通の人より劣っていると感じる。一緒にいて恥ずかしい思いをさせるかもしれない。このような漠然とした不安を抱えている人が、サポーター(モニター)中にたくさん存在しました。
まずは、物理的な障壁を越えるために、また問題を解決するために、具体的にどのような制度や支援が必要なのか。情報はどこにあるのか。今後だれもが暮らしやすい社会を作るために、当団体が発信者として、引き続き取り組んでいくべき課題だと感じました。
同時に、まだまだ障がい者への理解が乏しいため、偏見が残っていることも今回の調査で浮き彫りになりました。
一方、障がいの当事者も、自分自身を差別や偏見の目で見ていないのかを今一度、考えてみましょう。恋愛の障壁を取り除く意味で、重要だと感じました。
今後、交際中または既婚者の恋愛調査を実施して、その意識にどのような差があるのかもみて行きたいと考えています。